2015/03/16

『グエルチーノ』展 国立西洋美術館







 イタリアのバロック絵画を代表する画家、ボローニャ派のグエルチーノ展が国立西洋美術館で開催されている。


 いくつか箇条書きでメモ。(基礎知識のおさらいを中心に)

・対抗宗教改革において、偶像崇拝を禁止したプロテスタントに対抗し、カトリックは絵画を利用した布教を積極的に行い、その際に一般に分かりやすい写実的で感情に訴えかける表現を志向した。バロック絵画はこうした時代背景のもとに生まれたが、グエルチーノの作品群はこの特徴をそのまま体現しているようである。バロックの始祖の一族ともいえるカラッチの用いた、現実に根差した親しみやすい宗教主題に影響を受けたという。

・色彩については全体的に明度・彩度ともに低いように思われたが、ヴェネツィア派の鮮やかな色使いがグエルチーノに影響を与えていることも見て取れる(特に原色系)。 独特な明暗表現、陰影の強いコントラスト。

・「聖と俗の狭間の女性像―グエルチーノとグイド・レーニ」について
 女性は当時は美徳の象徴として、精神性の勝利をあらわすために完璧な肉体が描かれたが、時に官能性が強く表現されることもあった。聖と俗、精神と肉体のパラドクスはバロック美術のかかえる矛盾のひとつ。
 女性像を描く際には宗教的な意義よりも、女性としての美しさが最優先とされた。
 クレオパトラ、ルクレチア、巫女などの当時からの人気の主題が描かれる。
 いずれも劇的なシーンの表現が多いが、その場面の烈しさにもかかわらず画面は静かで威厳を持ち、強い感情表現などはほとんど見受けられない。

 たとえばクレオパトラについていえば、自害のシーンにおいて自分の胸を噛ませた毒蛇は非常に小ぶりで、その傷口からは血液が少し垂れているのが辛うじて見える程度。彼女の顔に苦痛にゆがんだ表情などは一切浮かんでいない。
 当時は依頼主の希望により残酷なシーンを描くことを避けたことがあったというが、特に象徴主義画家などにおける同じ主題の表現と比較すると、当時の正統に属する絵画表現における一定の制約があったことが見て取れる。(あるいは完全に、時代の趣味の問題…?)(個人的には、もちろんハゲシイのが好み)

・画面の静けさ、という点では歴史画においても同様のことが言える。
 ロマン主義にみられる闘いや勝利のドラマはなく、静謐さや緊張感が強調される。

・ベラスケスがグエルチーノのアトリエを訪問したことがあるとのこと。(これはバロックの時代関係の把握のためメモ)

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