2016/11/19

『聖なるもの、俗なるもの――メッケネムとドイツ初期銅版画』国立西洋美術館


 
 
 『メッケネムとドイツ初期版画展』。楽しかった。良い展示。私がメッケネムという名前を知ったのも初めてだったし、そもそもこの時代にも地域にも詳しくなく、事前知識もほとんどなかったのですべてが新鮮でいろいろな発見だった、というのも大きいかもしれないけれども。
 とはいえそういう人がほとんどであるということを配慮してくれているようすで、展示の説明書きも、キャプションも非常に丁寧で分かりやすい。聖のあとに俗が置かれ、といった構成の工夫のために当時の美術の在り方もうかがえる。聖人信仰として使われたものや、免罪機能を持つ版画などもあったそう。
 
 版画が流行していた当時において、コピーの制作はありふれていたもので、「贋作」として咎められることがなかったという。メッケネムの作品の中には、コピーであるためにオリジナルの作品と左右反転しているものも多い。 
 
 興味深かったこととしては、銅版画と金銀細工の関係について。版画がデザインの見本を提供するという役割を持っていたらしい。金細工を手掛けている版画家もいる。デザインの中には、植物文様の中に人物が配置されているものが面白かった、なんとなくグロテスク文様ぽいというか。
 
 あとは、風刺画の中ではその多くは男性が情けない様子で女性優位に描かれていること。民衆レベルでは、女性が強い、という認識だったのかしら…?
 

イスラエル・ファン・メッケネム(c.1445-1503)は、15世紀後半から16世紀初頭にライン川下流域の町で活動したドイツの銅版画家です。当時人気のショーンガウアーやデューラーら他の作家の作品を大量にコピーする一方、新しい試みもいち早く取り入れました。また、作品の売り出しにも戦略を駆使するなど、その旺盛な活動から生まれた作品は今日知られるだけでも500-600点あまりにのぼります。

メッケネム作品の多くはキリスト教主題をもち、人々の生活における信仰の重要性をしのばせます。もっとも、像の前で祈る者に煉獄での罪の償いを2万年分免除する《聖グレゴリウスのミサ》など、なかには当時の信仰生活の「俗」な側面が透けて見えるものも含まれます。また、当時ドイツの版画家たちは、まだ絵画では珍しかった非キリスト教的な主題にも取り組むようになっていましたが、メッケネムも、男女の駆け引きや人間と動物の逆転した力関係などをユーモアと風刺を込めて描いています。

本展は、ミュンヘン州立版画素描館や大英博物館などからも協力を得て、版画、絵画、工芸品など100点あまりで構成されます。聖俗がまじりあう中世からルネサンスへの移行期にドイツで活動したメッケネムの版画制作をたどるとともに、初期銅版画の発展と受容や工芸との関わり、コピーとオリジナルの問題、作品に映された当時の社会の様相などにも目を向けます。 
http://www.nmwa.go.jp/jp/exhibitions/2016meckenem.html [2016/09/12]
 
 
 

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