2016/07/03

「生誕150年 黒田清輝─日本近代絵画の巨匠」 東京国立博物館平成館




 
「生誕150年 黒田清輝─日本近代絵画の巨匠」
東京国立博物館 平成館 特別展示室   2016年3月23日(水) ~ 2016年5月15日(日)

 非常に充実した展示だった。パリ留学から帰国後の日本画の模索、アカデミズムにおける自身の立場上の建前と画家としての本音、といったように、彼の試行錯誤の後を辿るように構成される。《湖畔》をはじめとする代表作、彼の多岐に渡る画業の軌跡が余すところなく展示されていて、これまでに知らなかった様々な側面を伺うことができるし、その終わりに《智・感・情》があらわれるという演出にはその狙い通り昂揚しないではいられない。
 彼の師であるラファエル・コランの作品にはかなりあからさまに性的で官能的な裸婦像が多いように思った。


「湖畔」で広く知られ、日本美術の近代化のために力を尽くした黒田清輝(1866-1924)の生誕150年を記念した大回顧展です。
この展覧会は師コランやミレーなど、黒田がフランスで出会い導かれた作品をあわせて展示しながら、留学時代の「読書」「婦人像(厨房)」や帰国後の「舞妓」「智・感・情」などの代表作によって、黒田清輝の画業全体を振り返ろうとするものです。


第1章 フランスで画家になる─画業修学の時代 1884~93
フランスに渡った黒田は画家を志し、天賦の才を発揮して官製展覧会であるサロンに入選するに至ります。黒田はラファエル・コランにアカデミックな絵画教育を受けただけでなく、ピュヴィス・ド・シャヴァンヌやバスティアン=ルパージュ、ジャン=フランソワ・ミレーなどのフランス近代絵画の主題やそこに表された思想に強い関心を抱きました。画家として歩みはじめ、フランス画壇にデビューする渡欧期の作品は、ヨーロッパの明るい光にあふれています。


第2章 日本洋画の模索─白馬会の時代 1893~1907 
1893年夏に帰国した黒田は、日本洋画のあるべき姿を模索します。日本の人々に受け入れられ、かつ国際的にも高く評価される油彩画を生み出そうと努めた黒田の作品は、日本の洋画壇に清風を吹き込むことになりました。帰国直後の「舞妓」(1893年)や大作「昔語り」(1898年、焼失)、「湖畔」(1897年)、「智・感・情」(1899年)などは、日本の主題やモティーフによって、世界に認められるような日本の洋画を目指して描かれました。


第3章 日本洋画のアカデミズム形成─文展・帝展の時代 1907~24

日本にアカデミズムを打ち立てるべく奮闘し、美術教育や美術行政で社会的役割を担った黒田は、多忙を極めました。そのなかで黒田は新しい表現に共感していきます。文展や帝展といった官製展覧会に出品する公開を前提とした作品では、フランス画壇を手本にしてアカデミズム形成を意図して制作しました。
同時に黒田は、ポスト印象主義や表現主義のような新しい美術表現の潮流を意識した公開を前提としない小品も描いて、揺れ動く画家の内面が表れています。
http://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=1759 [2016/05/31]

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