2016/07/16

「いま、被災地から――岩手・宮城・福島の美術と震災復興」東京芸術大学大学美術館


 
 
 東日本大震災によって美術作品や文化資源が被った損害は計り知れず、この展示はそこから一歩ずつ復興へと歩みを進める今現在の状況を伝えている。約5年後における途中経過の報告、といった趣旨のよう。震災をひとつのテーマとして扱った大きな展示はこれまであったのだろうか。
 
 東北という地名は3.11以降、人々の中で地震と津波という負のイメージと切り離し難くなってしまったように思うけれども、以前訪れた際に感じた東北という地の有している風土と空気はこれらの土地に縁のある作家たちの作品を並べた前半の章で触れることができる。
 
 博物館、美術館における資料保存について授業で少し勉強する機会があったということもあって、後半の修復についての章も興味深く見た。(先生によれば)修復の際に大事なのは、「何が資料の価値か?」を見極めることであり、優先順位を考慮すべきであって、闇雲に復元しようとすれば良いというわけではない。もとよりすべてを元通りにすることなど不可能なのだから。可能な範囲での最善を目指すこと。知恵と技術を尽くしての修復は現在進行形であって果たしていつか終わりを迎えるのかは分からないけれど、今後の経過にも目を配っていなくてはならないと感じた。
 
 
 2011年の東日本大震災では陸前高田市立博物館、石巻文化センターなど多数のミュージアム施設が被災して、貴重な文化財をはじめとして多くの文化資源、美術資料が損傷しました。しかしその直後から支援の手が全国から差し伸べられ、資金援助や寄附などもあり、復興活動が始まりました。
 美術資料に関しては全国美術館会議がいちはやく東日本大震災復興対策委員会を立ち上げて、岩手県、宮城県、福島県の県立美術館などと連携しながら作品の救出、修復、復元などの事業を計画的、継続的に実施してきました。
 2016年を迎えてもその作業は終わりませんが、それらの経過を報告する企画展が東京の東北地方への玄関口ともいえる上野で開催されます。被災状況、救出活動などを臨場感あふれる写真で紹介し、修復された作品の一部を展示するとともに、この機会に東北地方ゆかりの近現代作家の秀逸な作品を一堂に展示いたします。文化財保護を考える一方で東北地方の豊かな美術文化の土壌を体感できる貴重な機会となります。  
http://www.geidai.ac.jp/museum/exhibit/2016/tohoku/tohoku_ja.htm[2016/07/16]

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