2016/03/04

「ボッティチェリ展」 東京都美術館



 日伊国交樹立150周年を記念したボッティチェリ展。日本での本格的な回顧展は今回が初とのことで、ボッティチェリの作品が20点以上展示されている。有名なものだと、《書物の聖母》や《美しきシモネッタの肖像》、《書斎の聖アウグスティヌス》なども。

 展示の構成は、当時の背景をあらわすような資料や小物の展示を随所に織り交ぜながら、大きく、ボッティチェリの生きた当時のフィレンツェを紹介する章から、ボッティチェリの師匠であるフィリッポ・リッピに焦点を当てた章、主役のボッティチェリ作品を中心とする章、そして彼の弟子であり、フィリッポ・リッピの息子であるフィリッピーノ・リッピの作品を扱う章、と時代の流れを追って展開するものであった。
 当然ながら互いに師弟関係、親子関係にある三者の作風は類似しており、しかし技法や表現に各々の特徴があらわれている。たとえば、当時においてボッティチェリの絵画は理知的で男らしい雰囲気を持つと評されていたのに対し、弟子のフィリッピーノ・リッピはより甘美であり技巧には劣る、などと言われていたという。

 ボッティチェリの描く女性たちの、どこか愁いを帯びているようにも見える硬質的な表情が好きだ。生気が無いようにさえ感じられるのに、それらが木々や花々とともに描かれると途端に、妖しく色めきはじめるのも。

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