2016/03/19

「幻想と頽廃のアンソロジー~世紀末から現在まで~」Bunkamuraギャラリー

 
 
 Bunkamuraギャラリーにて、 「幻想と頽廃のアンソロジー~世紀末から現在まで~」。
 
 今回の展示の特徴は、昨年行われた「幻想耽美」展のように現代の日本の「幻想耽美」系統の美術を集めたというだけではなく、19世紀末において西欧で生じた「デカダンス」の美術動向と、日本のエログロやお耽美なアングラ系カルチャーとを並置して、ふたつの地にまたがり、19世紀末から21世紀までという1世紀半近くの長い期間にわたる作品を展示しているという点にある。現代日本にみられる「幻想耽美」の系譜を辿り、その源流にまで遡るようにして。もっとも展示の構成は、西洋から日本へ、時代を下るように進んでゆくから、世紀末の西洋の画家たちのエッセンスが日本へと渡ってさまざまなかたちで狂い咲いていく…というようにも見てとれなくない。
 ビアズリーと夢二。ベルメールと伊藤晴雨。イオネスコと沢渡朔。モリニエと四谷シモン。…これらを一度に同じ空間で見られる機会もそうそうない。時代的にも今回展示されていた日本の美術家たちが西洋美術に少なからぬ影響を受けているという面があるのだから、両者の親和性が高いというのは当たり前ではあるのだが、その関係性をより深く探っていく余地はまだまだ大いにあるのではないかと感じた。 
 このような展示がこれまでどの程度行われてきたことがあるのか分からないが、同様の趣旨の展覧会がまたどこかで開催されて欲しい。少なくとも、これほどの錚々たる面々の「こっち系」の作品が一気に眺められるというのは、個人的には、贅の極み…。
 

 いくつか気に入った・気になった作家。

ロドルフ・ブレダン/マックス・クリンガー/フェルナン・クノップフ/エリック・デマジエール/フェリシアン・ロップス/ヨルク・シュマイサー/フィリップ・モーリッツ/山本六三/ピエール・モリニエ/日和崎尊夫/ポール・ヴンダーリッヒ/エルンスト・フックス/藤本蒼/中村宏/伊予田晃一/多賀新
  
 
 以下、BunkamuraのHPより引用。
 
 1890 年代から20 世紀初頭にかけた世紀末、不安定な社会情勢や新時代への急激な変化へのストレスが顕在化し、迫り来るあらたな時代の転換期の前兆にある種の頽廃的かつ虚無的な空気が醸し出された。デカダンス(=頽廃的)はヨーロッパで発生したアール・ヌーヴォー、象徴派、ラファエル前派、ウィーン分離派などに代表される社会通念から逸脱した表現キーワードのひとつであり、ジャポニスムの影響を経て、神話・聖書・歴史・古典などより引用され、より幻想的・神秘的・装飾的な表現様式となった。そしてそれらは終末の予兆をも示し、頽廃する世紀末を象徴する芸術運動となった。

 そして関東大震災と世界的な大恐慌を背景にした大正から昭和初期の日本でも、国全体の倦怠感や政府の硬直性からいわゆる「エロ・グロ・ナンセンス」が社会を席巻した。その潮流は戦後にも受け継がれ、保守階層、政治家、資本家など権威主義への反発から若者を中心にした「カウンターカルチャー」が起こり、これまでにない前衛的な表現が数多く登場した。その担い手としてアングラ演劇の唐十郎や寺山修司、暗黒舞踏の土方巽らが異端児として、反主流の美学を確立させた。

 いつの時代も表現者たちは常にモラルから逸脱し、新たな時代と表現の再構築を試みる。それは、実験性に富み刺激的であるが故、大衆の理解を得られず、さらなる頽廃的かつ背徳的な美しさへの探求心をかり立てるのだ。本展では既成概念や時代を挑発し続け、スキャンダルを巻き起こし、後世に大きな影響を残したビアズリーやバイロス、日本のカウンターカルチャーを牽引した横尾忠則や赤瀬川原平など、世紀末から戦後の日本まで、時代の主流から逸脱したフィールドで活動した国内外の作家を中心に版画・挿画本・オブジェ・ポスター・書籍など展覧販売する。  
【出展予定作家】
イオネスコ、クノップフ、B・ジョーンズ、バイロス、バルテュス、ビアズリー、ブレダン、ヴンダーリッヒ、ベルメール、モリニエ、モロー、モーリッツ、ヤンセン、ロセッティ、ロップス、赤瀬川原平、荒木経惟、池田満寿夫、伊藤晴雨、井上洋介、伊豫田晃一、北川健次、沢渡朔、篠原有司男、城景都、多賀新、竹久夢二、つげ義春、土井典、トーナス・カボチャラダムス、中村宏、成田朱希、土方巽、藤本蒼、山下清澄、山本じん、山本六三、横尾忠則、四谷シモン 他 
http://www.bunkamura.co.jp/gallery/exhibition/160302gensou.html[2016/3/19]

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