2015/05/10

『若冲と蕪村』展 サントリー美術館

 大学のゼミで扱う書籍も自分で読む本も、最近はもっぱら西洋のものが中心であるから、あまりにも長いあいだ日本要素に触れないでいると、そろそろやばいぞと頭の中で私の中のご先祖様的なか何かが謎の危険信号を発する。
 今回の若冲と蕪村展に関しても、その信号を落ち着かせる目的で前売りを購入していて、会期終了の2日前に訪れたのではあるけれど、実際に作品をこの目で見るとやはり予想していたよりもはるかにいろいろなものが得られるようだ。思わぬ方向からがつんと鉄槌を与えられた感覚。主題、構図、筆触、なにからなにまであまりにも新鮮に感じてしまって、ふだん自分がいかに日本美術に疎かったかということを思い知らされた。と同時に、ああそうよね、これでいいのよね(?)という安堵感のようなものに包まれる。

 頭の中でその意識はあったけれど、ここ1年近くは特に根本的には馴染めるはずもない西洋的な価値観に染まることである種の息苦しさを覚えていたのだと、初めて真に痛感した。ここはさしあたりキリスト教も絶対王政も王立アカデミーも市民革命も社会主義運動も、ありとあらゆる西欧的なものとは無縁な世界なのだもの。

 伊藤若冲は以前から少し気に入っていたけれど、実際の作品を目にしてものすごく好きになった。彼の派手さは「煌びやか」と「ケバい」との間で絶妙な均衡を保っていてそれが実に心地好い。ああもう、この”美”が、日本に於いてではなくてどこで生まれ得るだろうか(小並感)。まっさらの無の空間にしなやかに伸びる梅の花は、枝分かれしたその先端にまで息が通っているようである。華道をしていたころを少し思いだした。


ミッドタウンはすばらしいところ。

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