2015/07/25

「ボッティチェリとルネサンス フレンツェの富と美」 Bunkamura ザ・ミュージアム


 少し前のことになるので思い出しつつ。惰性で行ったようなところもあったのだけれど、思いのほかとても楽しむことができたし勉強になった。最終週の土曜日だったのに人もそれほど多いというわけではなく、混雑に苛立ちを覚えることもなく観て回る。
 ボッティチェリの展示も一応何点もあるけれど、どちらかというと展示品を通じてルネサンスの経済と風俗について見てゆくというのがこの展示の趣旨だったように思う。そしてそうしたやや教育的な方向性は案外功を奏していたし、へたをすると回顧展のようにひとりの画家の作品だけを飾ってゆくよりも観る人にとっての印象は強く残るかもしれない。当時流通してた金貨と偽造貨幣から始まって、世界の拡大を示す航海図、フィレンツェの豊かさを示す豪奢な生活と奢侈禁止令後の絵画の変遷。パトロンとしての銀行家の存在。宗教や婚礼の様子をあらわすような絵画作品や日用品の展示へと移ってゆく。

 肝心のボッティチェリも、その作品をまとめて何点か見ることができたのももちろん貴重なことである。メディチ家の最盛期から没落、そしてサヴォナローラによる「虚栄の焼却」へと、フィレンツェの時間が経過するに合わせて、彼の作風の変化が見て取れる。あと、《ヴィーナスの誕生》の、裸体のヴィーナスだけが抜き出されて描かれている作品があった。背景は無地。あの背景から抜け出してきたにしても存在感がある。

 個人的に気に入ったのは、14世紀のイタリアの工房で作られたという鍵。当時、鍵は富、権力、権威の象徴とされていて、この時代にはデザインも洗練されるようになったという。

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