2015/02/11

『新印象派―光と色のドラマ』展 東京都美術館

 東京都美術館の『新印象派―光と色のドラマ』展。展示はモネ、スーラ、シニャック、リュス、クロスなど。確立した理論や技法の存在しない印象派から脱し、点描画法を確立した科学的印象主義(よく考えるとすごい名前)の最盛期を迎えたのちに、やがて規則から色彩が完全に解放され、マティスに代表されるフォービズムに至る―という流れに沿った分かりやすい展示だった。

 個人的に印象に残ったのはアンリ=エドモン・クロスの作品。点描画の技法の試行錯誤を経て、小さな点ではなく、モザイク画のように描くスタイルを定着した新印象派を代表する画家である。
彼の作品が気に入って絵葉書も購入してしまったのだが、そのきわめてワタシ的な理由のひとつとして、作品にピンクが使われているということがある。それも小学生が水彩絵具で赤と白を混ぜて作ったかのような、典型的なももいろ、ピンクいろなのだ。ピンク以外にもいわゆる"七色"が見事に配置されるという色遣いは現在において眺めても斬新に感じられ、タブローに描かれた公園は虹色の楽園であるかのようだった。
 主題についても、時代が下るにつれて、カンヴァスには風景や肖像だけではなく、徐々に心の内奥や神話世界を表現するかのような神秘的なテーマが描かれるようになってゆくことも見て取ることができ、興味深い。

 マティスはクロスから新印象派を学び、のちに遂にそれを打開する。マティスの初期の作品には確かに新印象派の名残が見て取れる。こうしてフォービズムの画家たちが、規律の枠に留まりきらずそこからあふれ出しつつあった色彩の完全解放を成し遂げたのだという事実を展示によって知らされるのは、感慨深いものがある。

 普段から画集の図版やPC上の画像だけではなく、機会が得られたなら可能な限り実物の作品を観賞するということを心がけてはいる。だがマティエールに特色を持つ新印象派は特に、タブローをこの目で見ないことにはその作品を知ったとは決して言えないと強く感じた。更にいえば、手でそっと、表面に触れることができたら。…しかしそれは不可能だから、ひたすら舐めるようにじっと見つめ続ける。凹凸を認識する目の触覚が少しずつ、鍛えられてゆくかのよう。

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