2016/08/22

「伊藤文學コレクション オールド・ロマンーー歴史の小片を掻き集めて」


 
 
 
 絵葉書と蔵書票に大きく流行した時期というのがあったことは知らなかった。世界の絵葉書の流行は日本とおよそ時期を同じくしていて、そのきっかけが1900年の国際郵便の開始。1904年の日露戦争を機に戦勝記念絵葉書が販売されて、以降急速に普及したという。政府の政策にも結びつくものだったという点は興味深い。夢二をはじめ、絵葉書にイラストを提供することで小金を稼いでいた画家などもいたとか。
 
 「絵はがき芸術の愉しみ展」というのが過去に開催されているようで、その図録には日本における絵葉書の誕生と変遷が書かれている。オールド・ロマン、歴史の小片。一枚一枚の小さなピースがそれぞれの記憶を留めていて、私たちの前に姿を現しているのだと思うとふしぎな気持ち。



今から約150年前、黒船がやってきて日本に新しい風が吹いた。数多の人が自らの手で未来の設計図を思いのままに描いたロマンティックな時代が訪れた。それからというもの、いくつもの戦争と改革を重ねて社会が変わり、文化は成熟していった。

そのひとときを刻む文字、絵図があった。明治・大正の時代のすがたと熱量を一枚に込めた絵葉書や蔵書票等。これらは量産され、多くの人の手に渡り、未来への高揚感や希望へと結びついていった。こういったロマン溢れる歴史の小片を伊藤文學氏は蒐集した。

オールド・ロマンは自由な時間軸の往来を可能にする。名も知らぬ数多くの物語が込められた一枚からロマンの敷石を辿ると、私たちの生きる現代が見えてくる。

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