2016/08/22

「描かれた夢解釈――醒めて見るゆめ/眠って見るうつつ」国立西洋美術館




 国立西洋美術館、版画素描展示室での企画展。

「目醒めているときには見られないような、偉大な理論と優品を、夢のなかでいかにしばしば見ることであろうか。だが、目醒めれば、その記憶は失われるのだ」(下村耕史訳)――ドイツ・ルネサンスを代表する画家、アルブレヒト・デューラーは、未完に終わった『絵画論』の草稿に、そう書き残しています。

「優れた画家の心は形象で充ちている」と記し、晩年には終末的な洪水の夢を見たことでも知られるデューラーは、人間の心内に蓄積された無数のイメージ記憶が、目醒めているときよりも眠っているときにこそ活発に動きだし、豊かな変容を遂げていくことを、20世紀におけるシュルレアリスムの台頭などより遥か以前、16世紀初頭の時点で、どうやら敏感に悟っていました。

こうしたデューラーの思考が物語るように、西欧の芸術家たちはルネサンス期以来、しばしば「夢」に対する関心を露わにしています。しかも、彼らはそれをただ言葉で論じるだけでなく、絵画や版画によって描きだしてもいました。それらは1900年にジークムント・フロイトが『夢解釈』を書くのに先立ってなされた、「描かれた夢解釈」とでも呼べる試みではなかったでしょうか。

当館の所蔵作品によって構成されるこの小企画展では、デューラーやジョルジョ・ギージ以降、フランシスコ・デ・ゴヤやマックス・クリンガー、フェリックス・ブラックモンやオディロン・ルドンといった近代画家たちまでの「夢」の表象を集め、さらには「メフィストフェレス」や「聖アントニウスの誘惑」といったテーマに光をあてることで、西欧における「眠り」や「夜」、無意識の「欲望」や「誘惑」のイメージに迫りたいと思います。 
http://www.nmwa.go.jp/jp/exhibitions/2016dream.html [2016/07/03]




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