2016/05/04

「キュー王立植物園所蔵 イングリッシュ・ガーデン 英国に集う花々」パナソニ ック汐留ミュージアム


 


「世界遺産キュー王立植物園所蔵 イングリッシュ・ ガーデン 英国に集う花々」
2016年1月16日(土)~3月21日(月・祝)

 
 英国のキュー王立植物園が所蔵する、ボタニカル・アートの展示。来場者は女性が9割。きれいなお花の絵、というだけで客層がわりと固まるのかも。
 
 ただ別に、ボタニカル・アートは趣味の範囲としてとどめられて片付けられてしまうようなものではない。もとより植物学の進歩と軌を一にして発展してきた植物画は、その美しさによって人々の心を魅了するだけでなく、18世紀におけるリンネの自然物の分類方法の体系化やダーウィンの進化論のような当時の科学をはじめとする時代の知の在り方と密接なかかわりを持つし、モリスのような装飾工芸への着想提供、また大航海時代以降の植民地政策など政治的な事象をはじめとする様々な要素と連関している。むしろ、かなり考え甲斐があるジャンル?。以下、備忘録。
 
 
・ガラス温室について。鉄とガラスの技術の向上によって、外国産の熱帯植物を育てるための温室が実現した。最初の設計者はイギリスの造園家であったジョセフ・パクストン。ロンドン万国博覧会の水晶宮の建築ノウハウとして受けつがれていったという。

・植物研究者=植物画家。観察者としての視覚体験。解剖学的な眼差し。
 
・19世紀末以降、写真が普及してからも、ボタニカル・アートがその役割を縮小させていったわけではない。対象の正確な写し取りのみが必ず重要、というわけではない。「描く」ことはまた、対象においてどこが重要であるかを見極める「編集」作業でもあり、デッサンは写真よりも多くを語ることがある。
 
・1837年、イギリスの官立デザイン学校において、産業デザインとしての「アート・ボタニー(芸術植物学)」という講座が設けられる。
 *クリストファー・ドレッサー(慣習的、『植物学の手引き』)
 *A・W・N・ピュージン(中世)
 *オーウェン・ジョーンズ(インド・イスラム)
らが代表的なメンバー。彼らは「様式化」を志向していたが、ラスキン、モリスがこの傾向に反対。
 
・ウェッジウッドの創設者はチャールズ・ダーウィンの祖父。(!)


○展覧会概要

自然の景観を活かし、多種多様な美しい草花を巧みに配して変化に富んだ光景をつくり出すイングリッシュ・ガーデン (英国式庭園)。意外にもそれらの植物の多くはヨーロッパ原産ではなく、大航海時代以来、その美しさとめずらしさに魅せられたヨーロッパの人々により、冒険と探求の結晶として世界中から集められたものです。探検隊やプラントハンター(植物採集家)はアジアや中南米に派遣され、鑑賞用植物の他にさまざまな資源植物も集め、そうした植物は取引されることによってヨーロッパの社会や経済に少なからぬ影響を及ぼしました。
 特に英国においては植物研究と庭づくりへの情熱により、庭園は文化として豊かに発展しました。世界各地からもたらされた植物は記録と研究のためにさかんに描かれるようになり、ここに科学的探究の成果の芸術的な表現であるボタニカル・アート(植物画)という絵画領域が確立されました。それは人々を魅了し、鑑賞熱も高まりました。植物はまたデザイナーたちを魅きつけ、陶磁器、室内調度、テキスタイルや服飾品などに溶け込み日常生活に彩りを添えています。
 18世紀半ばに英国王の私的な庭園として始まったキュー王立植物園(※)は、いまや最先端の植物学の研究機関となり、また22万点のボタニカル・アートを収集し世界有数の植物園となりました。壮大な庭園はロンドンっ子たちの心を癒すいこいの場となっています。長きにわたる植物学と造園技術への貢献により2003年にはユネスコ世界遺産(文化遺産)にも登録されました。
 本展はその発展に寄与したジョセフ・バンクスやチャールズ・ダーウィンらの研究者、17-19世紀を代表する植物画家たち、ウィリアム・モリスをはじめとするデザイナーなど、世界中で愛されるイングリッシュ・ガーデンにまつわる人々に注目しながら、数世紀にわたる英国人の植物への情熱をひもとくものです。同園のコレクションから選りすぐった、黎明期から現代までのボタニカル・アートの名品、さらに植物を着想源としたデザイン・工芸品を含めた約150点を展観します。

※キュー王立植物園…ロンドン南西部のキューにある王立植物園。 
http://panasonic.co.jp/es/museum/exhibition/16/160116/index.html [2016/05/04] 

 

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